正吉はそういったが、見ると窓のおおいが破れている。キンちゃんが破ったものだろう。正吉は急に外が見たくなった。
「正ちゃん、およしよ。だめだ、外を見ちゃ……」
 と、キンちゃんがとめるのにもかまわず、正吉は、とうとう窓から外を見た。
「あッ、あれは……」
 正吉の肩が大きく波打っている。顔は、まっさおだ。
 正吉は何を見たか。
 大きなビルを四、五十あつめたくらいの大きさの、まんまるい黄色に光る球を見たのであった。
 それは地球だ。地球だった。
 地球の大きな球が、空間に、つっかえ棒もなしにいるところは凄《すご》いというか、恐ろしいというか、艇長が外を見るなと命令したわけが、やっと分った。


   偵察《ていさつ》ロケット


 七日以後は窓もひらかれ、外をのぞいてもさしつかえないことになった。そのころ地球は、ずっと形が小さくなり、小山ぐらいの大きさとなったので、恐ろしさが減《へ》った。もうあれを見て発狂したり、気絶《きぜつ》する者もなかろう。
 地球は小さくなったが、いよいよ光をまして白く輝く大陸の輪郭《りんかく》もよく見える。しかし球という感じがだんだんなくなって、平面のような
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