中へとびあがったが、その出発の壮観を見た者は、あまり多くなかった。
それから新月号はぐんぐんと上昇を続け、成層圏《せいそうけん》に突入した。成層圏もやがて突きぬけそうになって高度二十キロメートルを越えるあたりでは、あたりは急に暗くなり、夜が来たようであった。しかし、本当の夜が来たのではなく空気がすくなくなって、そのところでは太陽の光がいわゆる乱反射《らんはんしゃ》をして拡散《かくさん》しないために、あたりは暗いのであった。
しかし太陽は上空に、丸く輝いている。それはちょうど月が夜空に輝いているに似ていて、太陽そのものは輝いているが、まわりは明るくないのだ。
そのころ星の群は一段と輝きをまし、黒い幕の上に、無数のダイヤモンドをまき散らしたようであった。
このような光景が、このあといつまでも続くのであった。
昼も夜もない暗黒の大宇宙であった。しかし太陽はやっぱり空を動いて見える。
大宇宙は、このように静かだ。生きているという気がしない。むしろ死んでいるように見える。それはあたりがあまりに暗黒であるのと、太陽にしても星にしても、暗黒の広い空間にくらべて、あまりに小さくて淋《さび》
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