ンノ博士のことばは、じつに本当のことであったけれど、正吉には、博士が正吉の宇宙旅行を思いとどまらせようと思って、つらいことばかり並べているのだと思った。
「ぼくは辛抱するのが大好きなんです。三十年も冷凍球の中に辛抱していたくらいですからね」
「ああ、そうか、そうか、それほどにいうのなら、連《つ》れていってやるかな」
「えっ、今なんといったんですか」
正吉はあわててたずねた。カンノ博士は、いよいよニヤニヤ笑顔になって正吉を見ていたが、やがて口を開いた。
「じつはね、私たちはこんど、かなり遠い宇宙旅行に出かけることになった。お月さまよりも、もっと遠くなんだ。早くいってしまえば火星を追いかけるのだ。そのような探検隊が、一週間あとに出発することになっているが、君を連れていってやっていい」
「うれしいなあ。ぜひ連れてって下さい」
「しかし前もってことわっておくが、さびしくなったり、辛抱《しんぼう》が出来なくなって、地球へぼくを返して下さい、なんていってもだめだよ」
「そんなこと、誰がいうもんですか」
正吉は、胸を張《は》ってみせた。
「大丈夫かい。それから火星を追いかけているうちに、火星人の
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