しろ巨大なる原子力が使えるようになったから、昔の人にはとても考えられないほどの大土木工事や大建築が、どんどん楽にやれるのです。ですから、世界中どこへでも、高速地下鉄で行けるのです」
「ふーン。すると今は地下生活時代ですね」
「まあ、そうでしょうな。しかし空へも発展していますよ。そうそう、明日は、羽田空港から月世界探検隊が十台のロケット艇《てい》に乗って出発することになっています」
 正吉は大きなため息をついてひとりごとをいった。
「三十年たって、こんなに世界や生活がかわるとは思わなかったなあ。こんなにかわると知ったら、三十年前にもっと元気を出して、勉強したものをねえ」
 あとで分った話によると、例のモウリ博士は月世界探検に行ったまま、遭難《そうなん》して帰れなくなっているということだ。こんどの探検隊が、きっと博士を救い出すであろう。


   宇宙探検隊


 正吉は、その日以来、宇宙旅行がしてみたくてたまらなくなった。
 三十年前、やがて月世界へ遊覧《ゆうらん》飛行ができるようになるよと予言する人があったら、その人はみんなから、ほら吹きだと思われたことであろう。それが今は、ほんとに出
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