つ》の倍くらいの大きさに見えるようになった。
 しかし、火星の輪郭《りんかく》も、ぼんやりとしている。全体が赤橙《だいだい》色にぬられていて、なんだかうす汚い。黒緑色の線が、網《あみ》をかぶったように走りまわっているのも見える。極のところには白冠《はくかん》が、ひときわ明るく光っている。
 まちがいなく火星は、指呼《しこ》の間に見えているのだった。
 艇長室では、幹部の間に、火星のうわさがとび交《か》っている。
「モウリ博士。あなたは火星へ行かれたことがありますか」
「いや、こんどがはじめてですよ。しかしかねがね行ってみたくて、研究はしていましたよ。火星は、実に興味の深い星ですね」
「そうですとも。昔からさわがれ、そして今も一番人気のある星ですね」
「マルモさん。あなたは、火星へ何回ぐらい行ったんですかい」
「行ったというと、上陸したという意味ですか。それなら、二回だけです。そして、どっちの場合も大失敗でした。上陸する間もなく、生命からがら離陸しなくてはなりませんでした。火星は全く苦手《にがて》です」
「あんたでも、そうなのかね。これは意外だ」
「だから今度は、どうしてもうまく上陸して
前へ 次へ
全146ページ中109ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング