その一例だが君たちではなく、もっと身体の形のちがった者が来たこともある。彼らは、ながくいなかった。みんな帰ってしまった……彼らは、われわれの仲間をつれていった。それっきり、帰ってこない。君たちは、そういうわるいことをしないようにしてくれ……めずらしい、うまいたべものをたくさん、われわれにくれ……」
水棲魚人からはこんなことしかきくことができなかった。
しかしこのかんたんな返事の中からも、重大な発見がいくつかあった。
すなわち、光る怪塔は、はじめて見るものであるということ。
人類以外の生物が、今までに、この付近へ着陸したことがあること。
この二つは、非常な重大なことであった。大警戒が必要となった。あの怪塔から、人類以外の生物がとびだしてくる可能性は十分にあるのだ。そのときマルモ探検隊が最悪の危機をむかえることは、今さら覚悟をあたらしくするまでもないことだった。
このへんで、マルモ隊長は、はらをきめなくてはならない。
意外な正体
ついに、決死の偵察隊が、光る怪塔のところへ派遣《はけん》されることになった。
その人選は、マルモ隊長がした。
カンノ博士が偵察隊員に任ぜられた。
それからカコ技師に、タクマ機関士、それに正吉少年の四名だった。
ところがコックのキンちゃんが、ぜひつれていってくれといってきかない。ことに、彼は正吉少年の身の上を心配して、正吉が行くところへは、ぜひ自分を護衛者《ごえいしゃ》としてやってくれと、隊長へ熱心にねがった。
そのあげく、キンちゃんの願いは、ついにゆるされた。正吉とキンちゃんとは大よろこびで抱《だ》きあった。
「それでは、行ってきます」
と、カンノ博士は、さすがに顔をかたくして、マルモ隊長以下に別れのことばをのべた。
「成功をいのる。みんなの運命が、君たちの行動にかかっているんだから、自重《じちょう》してくれたまえ」
マルモ隊長は、そういって、目をまたたいた。
一行五名は出発した。
のこる隊員は、やはり怪塔への監視をゆるめなかった。もし塔内から何者かあらわれた場合にはすぐ信号をもって、カンノ偵察隊へ知らせることに、手はずができていた。
だが、怪塔はしずまりかえっていた。いつまでたっても、ネズミ一匹も出てこなかった。それだけにますます気味がわるくてしょうがなかった。
あまり遠い道のりでもないので、
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