三角形の恐怖
海野十三
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)中野《なかの》の先の
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)一寸|残忍性《ざんにんせい》を帯びた
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)例の細田弓之助[#「細田弓之助」に傍点]という人
−−
それじゃ今日は例の話をいよいよすることにしますかな。罪ほろぼしにもなりますからね。そうです。罪ほろぼしです。私の若い時のね。いや艶っぽいことなんか身に覚えはありませんから、アテられるなんて事はありませんよ。それは罪は罪だと思いますよ、今でもね。そうです、もう二十年も昔になりましょうか。先帝陛下が御崩御になって中野《なかの》の先の浅川《あさかわ》に御陵《ごりょう》が出来た頃の話なんですよ。
その当時私はW大学へ通っていました。随分若こうござんしたよ。今見たいにこんなにデクデク肥っちゃいませんが、中肉中背という奴で頬っぺたも赤くて、桜の蕾《つぼみ》かなんぞのように少しふくらんでいましたよ。亡《な》くなった姉のお友達に電車の中なぞで行き合うと、
「宗夫《むねお》さ
次へ
全27ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング