とにきまった。
「聞いたかよ、おそろしいこんだ。時計屋敷を掃除して、あそこに人が住むんだとよ」
「これは困ったことだ。今にみんな、おそろしいたたりに泣き面をして暮らすようになるだべ」
「子供たちによくいいきかしとけよ、子供は、こわいもの知らずだから、新興班《しんこうはん》について、幽霊屋敷の中へはいるかも知れんからな」
「そうじゃ、うちの音松なんか、よろこんで時計屋敷の探険に行くちゅうだろう。はて、これは又気がかりなことがふえたわい」
そのようなわけで、旧家の人たちは、自分たちの子供に、時計屋敷へ近よってはならぬぞと、子供の顔を見ればいましめるのだった。
さて時計屋敷の大掃除をするに先立って、その下検分《したけんぶん》のために、七人の有力者が、屋敷へはいってみることになった。これがいわゆる新興班の連中で、北岸が班長、吉見がその副班長だった。
それはよく晴れた初夏の朝だったが、この七人は塀《へい》に縄ばしごをかけて、時計屋敷へ乗りこんだ。人々がよく働いているのが、お昼頃、村道からながめられた。しかしその七人は、その後どうしたわけか、邸《やしき》から出て来なかった。みんな行方不明にな
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