調べるため、畳をあげようとしたとき、とつぜん大きな音がして天井からこの鉄格子の檻が下りて来て私を中へ閉じこめてしまったのだ。それが私の悪運のつきだった。
 それでも私は、この檻から出て生きのびるためいろいろなことをやってみたが、すべてだめであった。屋敷の中にいるのは、地下につないであるヤリウス様と、檻の中の私とだけである。村人はこわがって、誰一人として近づかない。左平をぶら下げた以来とまったままの大時計が、うまく動き出して鳴ってくれ、村人を呼びあつめてくれたらと祈ったが、それもかなわぬことだった。
 私は天罰の下ったのを知った。そして今や死にのぞみ、わが罪をざんげして、おゆるしを乞《こ》う。最後ののぞみは、誰かが地下から、ヤリウス様をすくい出してくれることだが、これもはかない望みだ。私はヤリウス様をも同様に餓死させて、最後に主人殺しの罪を加えることになるのだ。そう思うと私は、自分の罪のおそろしさに気が変になりそうになる。
 神よ、あわれなるわがたましいを救いたまえ。
  明治四年十二月[#地付き]門田虎三郎」

   大団円《だいだんえん》

 門田虎三郎の遺書《いしょ》だった。
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