ふらになって、ぶっ倒れそうになった。しかもまだ、教えられたとおり、大時計の歯車と振子《ふりこ》のあるところまでつかないのであった。
 このとき八木少年は知るよしもなかったけれど、大時計は四つの鉦をうつ五分前のところをさしているのであった。
 そして八木君が、大時計の振子と歯車のあるところに出るには、まだ四つの扉を開いて急階段をかけあがらなくてはならなかったのである。はたして今はふらふらの八木少年は、間にあうだろうか。
 時計屋敷の崩壊《ほうかい》を前にして、大時計はますますおちついた調子で、こッつ、こッつと、時をきざんでいく。
 もしこの時計屋敷が、あと五分足らずの間に爆発すれば、少年たちも、その前にいった村人たちも、また八木君を救った怪囚人もみんな死んでしまうことになる。また時計屋敷の秘密も、すっかりうしなわれてしまうのだ。
 あます時間は、あと四分ばかり。
 さて、どうなることであろうか。

   無我夢中

 無我夢中とは、このときの八木少年のことだった。
 迫るこの時計屋敷の爆発時刻、間にあわなければ自分ももろともに屋敷の瓦礫《がれき》の下におしつぶされてしまうのだ。しかしもし
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