天井のすぐ下に水づかりになっている。八木君がそうなるすこし前から、ガラス天井の上では、ひとりの人物が活躍していた。
その人物は、両足を重いくさりでつながれていた。そしてそのくさりの一端から、また別のくさりがのびて、太い鉄の柱をがっちりとつかんでいた。
その人物は、昔西洋の僧侶《そうりょ》が着ていたようなだぶだぶの服を着ていたが、すそは破れて、膝のすぐ下までしかなかった。そしてやせこけて骨と皮ばかりになった足首を、鉄のくさりがじゃけんに巻いていた。その人物は、顔にお面をかぶっていた。頭の上から口のところまで、まっくろになった重そうなお面をかぶっていた。あごから下はお面はなかったが、そのかわりに、とうもろこしのようなひげがもじゃもじゃと、のび放題になっていた。
そういう怪人物が、ガラス天井の上で、さっきから活躍していたのだ。
彼は見かけにあわない力を、そのかまきりのようにやせさらばえた身体からひねり出し、鉄の棒をてこにつかって、大きな土台石《どだいいし》を動かそうとして、一所けんめいやった。
その土台石の奥には、すでに大きな穴が用意されてあった。それは多分この鉄のくさりにつながれ
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