はいつもかぶりをふって、
「何も、しんぱいなぞしていない、そんな話はもうごめんだ」
と、耳を貸すのもきらった。
その左平は、ちょうど一年ほどたって、時計台の天井にひもを下げ、自分の首をくくって死んだ。遺書があった。
「いのちがおしいものは、この屋敷に近よるな。左平」
と、かんたんな文句がしたためられてあった。
左平の自殺を見つけたのは、雇人の喜三という老人だったが、そのしらせに村人がこの屋敷へかけあつまったとき、さらにへんな話を聞いた。
それはこの一ヶ月ばかり、奥様も千草も共に雇人たちに顔を見せず、そのことを旦那さまの左平にいうと、左平のきげんがたいへんわるかったとのことだった。
そこで、みんなで手わけして、各部屋をさがしてまわった。
すると、おどろくべきものを発見した。
二階の奥の居間に、はなやかな女の蒲団《ふとん》が二つしいてあるのを見つけた。たしかに人がねている形だったが、蒲団をあたまからかぶっている。それがおかしいというので、みんなして蒲団をめくってみたら、中には白骨がねていた。骨がばらばらになっているが、たしかにどっちも一人分の白骨がねていたのである。
さあ
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