ふらになって、ぶっ倒れそうになった。しかもまだ、教えられたとおり、大時計の歯車と振子《ふりこ》のあるところまでつかないのであった。
このとき八木少年は知るよしもなかったけれど、大時計は四つの鉦をうつ五分前のところをさしているのであった。
そして八木君が、大時計の振子と歯車のあるところに出るには、まだ四つの扉を開いて急階段をかけあがらなくてはならなかったのである。はたして今はふらふらの八木少年は、間にあうだろうか。
時計屋敷の崩壊《ほうかい》を前にして、大時計はますますおちついた調子で、こッつ、こッつと、時をきざんでいく。
もしこの時計屋敷が、あと五分足らずの間に爆発すれば、少年たちも、その前にいった村人たちも、また八木君を救った怪囚人もみんな死んでしまうことになる。また時計屋敷の秘密も、すっかりうしなわれてしまうのだ。
あます時間は、あと四分ばかり。
さて、どうなることであろうか。
無我夢中
無我夢中とは、このときの八木少年のことだった。
迫るこの時計屋敷の爆発時刻、間にあわなければ自分ももろともに屋敷の瓦礫《がれき》の下におしつぶされてしまうのだ。しかしもしも間にあって、あの大時計をとめることができればたくさんの人の生命を救い、そしてこの大きな古い由緒《ゆいしょ》ある建物をまもることができるのだ。八木少年は、爆発を今とめることのできるのは自分だけであると思い、一所けんめいに階段をかけあがり、扉の錠をはずして又階段をあがり、又新しい扉にぶつかっていった。
大時計の下に出ることができたときは、うれしく涙が出た。
その涙をはらいおとして、八木少年は、大時計のゆらりゆらりと動いている大きな振子に抱きついて、両足をつっぱった。
大時計は、ぎいッと音をたて、歯車はごとんと停った。
その時、大時計の針は、鉦を四つ鳴らすちょうどその一分前のところを指していた。
「やあ、八木君だ」
「ほんとだ、八木君が時計の振子にぶら下っている」
さっき八木君が階段をがたがたと踏みならしてかけあがっていったそのあらあらしい音を、実験室にいた四少年は聞きつけて、とび出して来たのだった。
「ああ、うまく会えたね。よかった。ちょっと手をかしてくれたまえ」
八木君は、みんなの手を借りて、振子からはなれることができた。
彼は、この時計がもうすこし動いていたら、この屋敷は大爆発したことだろうと、怪囚人から聞いたことを話した。四少年は、それを聞いておどろいた。そしてその怪囚人のところへ行ってみることになった。
ところが、どうしたわけか、さっき八木君が開いて通って来た扉が、彼が閉めもしないのに、ぴったり閉っていた。それを開こうとしたが、なかなかあかない。秘密錠《ひみつじょう》になっている牡牛の彫刻があるかと探したが、そんなものはなかった。もちろん鍵穴もない。いろいろとやってみたが、扉はついにあかなかった。
「これはめんどうだ、時間がかかる、あとのことにしよう」
と、四本がいい出し、ほかの者もそれにさんせいしたので、あとまわしになった。そして五少年は、実験室をしらべる仕事をつづけることになって、そっちへ動き出した。
「あ、あの振子を、あのままにしておくのは、心配だ。振子が動きださないように、縄《なわ》なんかでしばっておきたいが、縄はないかしらん」
縄はなかったが、細い紐《ひも》が実験室にあったのを思いだした者があって、それをとって来た。そして五少年みんなで力をあわせて、重い大きな振子を紐でむすんで、その紐の他の端を階段の手すりにゆわきつけた。こうしておけば、振子は動かないから安心していられると、みんなはそう思った。
みんなは、元の実験室へもどった。
はじめてその部屋を見る八木君は、四本君の話を聞いて、目をかがやかせた。そしてしげしげとこの部屋を見まわした。
「へんだね、その額は……」
と、八木君がいった。
「ああ、へんだね。絵が切ってあるところが、へんだというのだろう」
六条君がいった。
「いや、そのことではなくて、切ったカンパスの裏に板がはりつけてあることだよ。板がはりつけてあるなんて、めずらしいことだ」
そういいながら八木君は、腰かけの上にのって、傾いているその額縁を両手でつかんで裏を見た。
「む、この額のうしろの壁には穴があいているよ。穴の向こうに、部屋があるらしい。やあ、たしかに部屋だ、うす暗いけれど見えるよ」
四少年はびっくりして、腰かけにあがっている八木君の足もとにかけ集った。
意外な人
いったい、それはどんな部屋であろうか。額のうしろの秘密の穴から出入りできる部屋であるから、ただの部屋ではあるまい。
「かまうことはない。どんどん、はいってみようよ」
少年たちは元気であった。
そこで額を横へ
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