したが、そのとき咄々先生はからからと笑って、
「やあ、なにを騒ぐぞ。これも商人の儲け仕事の一つさ。つまり石材《せきざい》の値が、高くはねあがる見込みだと一般に思わせて、大儲けをしようというわけだよ。なあに、爆発なんぞしやしないよ。うっかりその手に乗るやつが大莫迦《おおばか》さ」
 と、一笑《いっしょう》に附《ふ》した。
「ああなるほど。これもやっぱり金儲け的|謀略《ぼうりゃく》だったか」
 と、先生はうなずいて見せたが、しかし彼は、どういうわけか、完全に不安の念から放れたとまではいかなかった。


     3


 互《たがい》に対立した二つの見解がたしかにあったのである。
 この二つの見解は、二十四日、二十五日の両日に於て、互いに追いつ抜かれつ、その勢いを競ったのであるが、いよいよ金博士警告の爆発予定日たる二十六日の朝になると、爆発論者は勿論のこと、昨日までの不発論者たちすら、一せいに荷物をまとめて、エディ・ホテル附近からどんどん避難を開始したのであった。大きな口をきいていた彼等さえ、やっぱり気持がわるくなったらしい。してみると、金博士の信用なるものは、この土地では仲々大したもので
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