敲《たた》いた。
「ね、分るだろう。だから、あの新聞広告を見て愕《おどろ》いて、水甕を割ったり、寝台をばらばらにしたやつは、大間抜《おおまぬ》けだということさ。だから、第五号以下、どんなことが、書き並べてあっても、気にすることなんか一向ないのさ」
「なるほど、なるほど。ええと第五号は、紫檀《したん》メイタ卓子《テーブル》か。それから第六号が、拓本《たくほん》十巻ヲ収メタル書函《しょばこ》か。それから……」
 と、彼は、警告文の左記列項《さきれっこう》を順々に読んでいって、遂《つい》に最後の項に来た。
「ええと、第十二号。礎石《そせき》。『エディ・ホテル』ノ礎石ナリとあるよ。こればかりは、所在がはっきりしているではないか。礎石といえば、石造建物《せきぞうたてもの》のホテルの一等下の角《かど》にある石のことじゃないか。あれは南京路《ナンキンろ》に面した町角《まちかど》だったな。あの礎石が、二日のちの二十六日に大爆発を起すことになると、これはたいへんだ。ホテルの近所の家は、全部立ち退《の》きをしないと大危険だねえ」
 彼は、驚駭《きょうがい》のあまり、歯の根もあわず、がたがたと慄《ふる》えだ
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