が案ずるところによると、金博士は、豪商《ごうしょう》に買収されているのにちがいない」
「買収されているって。それは、なぜそうなんだい」
「だって、そうじゃないか。第一は柱時計、第二は水甕、第三は花瓶、第四は寝台というわけで、今までのところで、この租界の中に於て、この四つの品に限り全部おしゃか[#「おしゃか」に傍点]になってしまったではないか。われわれは今夜から寝るのを見合わせるわけにも行かない。つまり寝台を新たに買い込まにゃならぬ。花瓶はちょっと縁《えん》どおいが、水甕《みずがめ》だって時計だってすぐ新しく買い込まにゃならぬ。そうなると、商人は素晴らしく儲《もう》かるではないか。なにしろべら棒に沢山売れることになっているからなあ。それに彼奴《やつ》らのことじゃから、足許《あしもと》を見て、うんと高く値上げするにきまっている。つまり、金博士は、商人に買収されて、あんな警告文を出したのにちがいないと思うが、どうだこの見解は……」
不断《ふだん》から冷静を自慢している一人の男が、咄々《とつとつ》として、こんな見解をのべたのであった。
「なるほどねえ、それは大発見だ」
と、相手の大人が手を
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