》は、いずれも毛嫌いされて、家の中には再び入れてもらえず、一旦は公園の中に持ちこまれて、甕の山を築《きず》いたが、万一この甕の山が爆発したら、あの刃物のような甕の破片が空高くうちあげられ、四方八方へ、まるで爆弾と同じ勢いで落ちてくる虞《おそ》れがあるというので、これではならぬと、また今度は、皆して、えっさえっさと甕をかついで黄浦江《こうほこう》の中へ、どぶんどぶんと沈める競争が始まった。なにしろ、いくら赤いペンキで数字が書かれたとて、もう既に十五年も経過しているのであるから、とても文字の痕《あと》がさだかなりとは思われず、さてこそそのさわぎも大きくなった次第《しだい》である。
その次に曰く、
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三、丈《タケ》が[#「丈《タケ》が」はママ]二尺グライノ花瓶《カビン》、口ニ拇指《オヤユビ》ヲ置キテ指ヲ中ニサシ入レテ花瓶ノ内側ヲサグリ、中指ガアタルトコロニ、小《チイ》サク5098ト墨書《ボクショ》シアリ。
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というわけで、今度は、立派な花瓶が一つのこらず、河の中に投げこまれてしまった。なるほど、十五年前に墨書《すみがき》し、その後十五年間
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