…」
「そこで、何でございますなあ、そのコンパクト型爆弾で、純金《じゅんきん》でもってお作りになったものがありましたそうで……」
「あったよ。すばらしい出来のもので、南京路《ナンキンろ》の飾窓《ウインド》に出ているのを有名なアフリカ探検家ドルセット侯爵夫人が上海土産《シャンハイみやげ》として買って持っていったことを、わしは今でも憶えている。あっそうだそうだ、あはははは、これはおかしい」
 博士はとつぜん、からからと笑い出した。秘書はびっくりした。博士が蟒などを喰べるものだから、はげしくのぼせあがって、気が変になったのかと思ったからだ。
「ど、どうなさいました」
「いや、思い出したよ。あのコンパクトに仕掛けて置いた時限爆弾は今日が十五年満期となるのじゃ。だから、それ、愉快じゃないか。あの侯爵夫人がジャングルの中かどこかであのコンパクトを出して皺《しわ》だらけの顔を何とかして綺麗にしようと、夢中になって、鼻のあたまをポンポンと叩いている。途端《とたん》にコンパクトが、どかーンと爆発してよ、侯爵夫人の顔が台なしになってしまう。ふふふ、考えてみても滑稽《こっけい》なことじゃ」
「なるほど、それ
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