は一大事でございますなあ。もう電報を出しても間に合いませんでございましょうな」
「今からでは電報はもう……」といいかけて何かを思い出したという風にしばらく口を閉じて、頭を傾《かたむ》け「ああそうだ。思い出したぞ。あのドルセット侯爵夫人は、今はこの世に居ないぞ」
「えっ、侯爵夫人は亡くなられたのでございますか。するとかの時限爆弾が早期《そうき》に爆裂《ばくれつ》いたしまして……」
「ちがうよ。爆弾の時限性については、あくまで正確なることを保証する。侯爵夫人は爆死せられたのではなく、アフリカ探検中、蟒に呑まれてしまって、悲惨《ひさん》な最期《さいご》を遂《と》げられたのじゃ」
「あれっ、蟒に呑まれて……」
秘書は、ぎょっとして、金博士の皿にのっている燻製の胴切《どうぎ》り蟒に目を走らせた。肉は、まだほんのちょっぴり博士の口に入ったばかりであったが、その切り取った腹腔《ふっこう》のところから、なにやら異様に燦然《さんぜん》たる黄金色《おうごんしょく》のものが光ってみえるではないか。それを見た瞬間、秘書は蟒が腹の中に金の入れ歯をしているのかと思ったが、次の瞬間、彼の脳髄の中に電光の如きものが
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