でしまったこと、そして礎石の爆発よりホテルの完全|倒壊《とうかい》まで約一分十七秒を費《ついや》したという数字の方が、より一層読者の科学する心を刺戟《しげき》することであろう。
それに引続いて、この租界では、大小三回の爆発があった。ホテルの礎石の爆発とを合わせて、四回の爆発があったわけだ。いずれも、それ相当の手応《てごたえ》があったのであるが、ここではその詳細を一々述べている遑《いとま》がない。ただ十二マイナス四イクォール八という算術に於て明かな如く、予想されたるあと八つの爆発は、ついにこの租界内では見聞することが出来なかった。
そのわけは、例ののこりの爆弾装填物が、装填後十五年もたった今日、この租界の外に搬出《はんしゅつ》されてしまったのであるか、それとも時限器の狂いでもって、二十六日以後に爆発するのであるか、そのへんははっきりしない。いずれにしても、租界の住民たちは、二十六日が去って一安心したものの、まだ枕を高くして睡ることは出来なかった。そしてそれからというものは、市民たちは暗いうちに起きて、慄《ふる》えながら戸口に佇《たたず》み、新聞が戸袋《とぶくろ》の間から投げ込まれると
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