に爆発するなんてそんな、べら棒なものがあってたまるものか。十五年すれば缶詰だってくさる頃だよ。ましてや金博士の手製になるあやしき爆弾が、十五年間もじっと正しき時を刻《きざ》んで、正確なる爆発を……」
残念ながら、咄々先生の言葉は、これ以上録音することが不可能の事態とは相成《あいな》った。なぜなれば、咄々先生の舌が、一抹《いちまつ》の煙と化してしまったからである。もちろん舌ばかりではない、咄々先生の躯《からだ》ごと煙となって、空中に飛散してしまったのであった。咄々先生が背にしていた礎石は、正直に大爆発を遂《と》げたのであった。時刻は正に二十六日の午前九時三十分――いや、こんな時刻のことなんか、読者には一向興味のないことであろう。それよりは、その礎石の爆発に端《たん》を発して、かの二十五階の摩天閣《まてんかく》たるエディ・ホテルが安定を失って、ぐらぐらと傾《かたむ》き始めたかと思うと、地軸《ちじく》が裂けるような一大音響をたててとうとう横たおしにたおれてしまい、地上は忽《たちま》ち阿鼻叫喚《あびきょうかん》の巷《ちまた》と化し、土煙《つちけむり》と火焔《かえん》とが、やがて租界をおし包ん
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