外手近に一つの案を発見したのだった。
「どうだったね。貸してくれたかい」
半平は下宿の二階に待っていてくれた友人、川原剛太郎《かわはらごうたろう》の顔を見るが早いか、こう声をかけたのだった。その友人は××生命へ出ている男だった。
「うん、貸してくれたがね」
友人は煙草《たばこ》の煙を忙《せわ》しそうに喫《す》った。
「きみの言うほどは駄目だったよ」
「じゃ、いくら貸したい。二百円か」
「うんにゃ、その半分。百円だあ」
「ちぇっ、百円ぽっちか、それじゃ治療代にも足りゃしない」
半平は川原の××生命へ、一万円の保険を掛けているのだった。この際、払込金の一部を低利で貸してもらおうと思って川原に交渉を頼んだのだったが、それが最高百円ではすっかり予想を裏切ってしまった。
「どうも気の毒だがね、どうにも仕様がないよ。これがきみの細君の保険だったら、ここんとこできみは一万円の紙幣束《さつたば》を掴《つか》んでいるはずだった」
「そういえば、なるほど。どうしておれはこう不運なんだろう!」
「不運といえば、思い出したがね」
友人の川原は改まった口調で語りだした。
「神龍子《しんりゅうし》という
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