ってくだすってもかまいません」
「あはははは。うわはははは」
 博士は、なぜか大声をたてて、からからと笑いだして、しばらくは笑いが停《と》まらなかった。そのうちにようやく笑いを停めると、こんどは笑いあきたか、急に熊《くま》の胆《きも》を嘗《な》めたようなむつかしい顔になって、
「では、こうしよう。来る八月八日を第一回目として、それから十年|毎《ごと》の八月八日に、お前はその日の日記を認《したた》めて、わしのところへ送ってきなさい」
「十年毎の間隔《かんかく》は、ちと永いですね」
「そうでもないよ。そうしてお前が、第八回目の手紙を書くようになったときには、お前は否応《いやおう》なしに、ピポスコラ族に出会《であ》った話を書かなければならないだろう。それまでわしは、ピポスコラ族のことも、又それと同じ生活様態になるわれわれ人類のことについても、喋《しゃべ》らないことにする」
「まるでお伽噺《とぎばなし》に出てくる人間の姿をした神様の台辞《せりふ》みたいですね。そんなまどろこしいことをいわないで、早く教えてください、一体われわれが遠き未来において、どんな生活をするかを……」
「云わないといったが
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