エネルギーを費《ついや》すことなしに、いとも正確にすすめられてゆくという風に見えた。
作者《わたくし》は、たいへん詰らない鬼村博士のスナップを、意味もなくだらだらと諸君の前に拡げたようであるが、これこそは最も意味のある大切なスナップなのであることは、頁《ページ》を追ってゆくに従ってお判りになろうと思う。とにかく、このスナップに現われたる鬼村博士の調子は、実に博士の性格の全部をものがたるものと云ってよい。博士はこの極東科学株式会社化学研究所長として令名《れいめい》があるばかりではなく、「日本のニュートン」と世界各国から讃辞《さんじ》を呈せられるほどの大科学者で、日本科学協会々長の栄誉を担《にな》っているばかりか、英国のローヤル・ソサエティーの名誉会長であり、米国のスミゾニアン・インステチュートの名誉顧問であり、独国のテクニッシェ・ライヒサンスタルトの名誉研究員であり、1940年に東京で開かれる万国工業会議には副総裁に任ぜられることに決定している。「日本の工業立国は鬼村博士によって完成されるであろう」といわれている。
鬼村博士のする事には無駄がない。その優秀な頭脳は各学会に、さまざまの
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