とにつまらない、錯覚《さっかく》のために不慮《ふりょ》の最後を遂《と》げた。国際殺人団全体にその飛報が伝わると団員一同は色を失った。それも無理のない話で、博士の企《くわだ》てた第二期計画の日は、実にその翌日の暁《あかつき》かけて決行されるのであったから。
 それは何?
 翌日の早暁《そうぎょう》、帝都の西郊《せいこう》から毒|瓦斯《ガス》フォルデリヒトを撒《ま》きちらし、西風《せいふう》にこれを吹き送らせて全市民を殺戮《さつりく》しつくそうという、前代未聞の計画であった。彼等は十三台の飛行機にそれぞれ分乗して、午前三時というに、根拠地を離れて午前四時を十五分過ぎる頃あい、予定どおりに今や眠りから醒《さ》めようとしている帝都の上空を襲来《しゅうらい》した。十三台の殺人団機は翼をそろえて南にとび、機体の後部から猛毒フォルデリヒト瓦斯を濛々《もうもう》と吐《は》き出《だ》した。その十三|條《すじ》の尾がむくむくと太くなり、段々と地上に近づいて来たとき、北方の空から、突如《とつじょ》として二隊の快速力を持った戦闘機があらわれ、一隊は殺人団機の後をグングン追いついて行った。他の一隊は、今や帝都の
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