る。
「これが弟月ですか。大きいですね。なぜこんなに大きくなったんです」
「弟月はだんだん下ってきたのだ。地球の引力によってひきよせられたんだ。見ていてごらん。今に弟月は地球にぶつかるから……」
「おじさん。月が地球にぶつかったら、どんなことがおこるんですか」
「見ていたまえ。もうすぐだ」
画面は四五回も切りかえられた。そのたんびに弟月は化物のように大きくなった。まるで地球が空にうつっているようであった。
その怪月の下に、アトランチス人たちが[#「アトランチス人たちが」は底本では「アトランチス人がたちが」]集ってふるえ、のろいの声をあげ、やけになって人殺しをし、またしずかに神に祈りをあげているのが見えた。方々に、えんえんと火がもえあがっていた。神へささげるかがり火か、それとも賊が民家に放った火か。ものすごい光景に、三四郎はたびたび目をふせねばいられなかった。
「ほら、始まった。弟月が地球に触接《しょくせつ》したよ。あれ、あのように地球にぶつかっている。しかも弟月は自転をつづけているんだ」
おじさんの説明の声がふるえている。
「あっ、おそろしい!」
三四郎は、両手で自分の頭をおさ
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