は戦友の背中を飛魚のように飛び越えてゆくものあり、魚雷の如く白き筋を引いて潜行するものあり、いや壮絶いわん方なき光景だった。
 五十人のキャメラマンは、しずかにクランクモーターの調子を見守っている。言い忘れたが、これらのキャメラマンはことごとくガラス張りの海底にカメラを据えているのであった。ただ集音器だけは、水上に首を出していた。
 虎鮫隊は、どこまで走る。
 ちょうどその前面にあたって、一隻の大きな鋼鉄船の模型が、上から巨大な起重機でもって吊り下げられ、もちろんその船底と廻るスクリューとは水面下にあった。
 がんがん、がりがりがり、と激しい衝撃音がする。
 くわっくわっくわっ、と、オットセイのような擬音のうまい鮫もまじっていた。そのとき楊《ヤン》博士は、ころよしと銅鑼《どら》のまんなかをばばんじゃらじゃらと引っぱたいた。
 いっせいに、真にいっせいに、いままで形相ものすごく、模型船をかじっていた虎鮫どもは、かじるのをやめて、さっと身を引き、粛々として、またスタート・ラインに鼻をならべて引返してくるのであった。実に、なんというか、まことに感にたえる楊《ヤン》博士の訓練ぶりであった。
 
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