ってあの黄風島へ渡り、計画に従って僕を病気として精神病院に入れ、折を見て殺害し、遺産を横領しようというつもりのところ、僕に脱走されてしまったのだった。その騒ぎの大きかったのも無理はない。――秀蓮尼は、こっちへかえるとき、ハルピン虎を正当防衛で射殺して来たそうだ。だから僕のために仇敵をうったも同然だ。
「どうして貴方は、虎なんかと渡りあったんです」
と僕が尋ねると、彼女は言葉をついで云ったことである。
それはもちろん、例の小函を探すためだった。僕が持っていた鍵によって、小函がハルピン虎の手にあることを知り邸内に忍びこんで、トランクを合鍵で開けて盗み出し、出ようとするところをハルピン虎に見つかったのだった。そして既に危くなったので、彼女は已《や》むなく彼を一発の下に射殺したのだった。しかし街はこのために俄かに厳重な警戒が敷かれ、だんだん調べの結果、犯人として秀蓮尼だということが分り、それがため追跡がいよいよ急になった。僧服を捨て、僕が残していった学生服に着かえ危地を脱走した。そして飛行機に乗って、今朝がた黄風島を抜けだし、先刻当港へついたということだった。
「でも、どうして森虎が犯人で
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