性であることがハッキリ感じられた。
「おやッ――」
きつい猿股のようなものが履《はか》されたと思うと、次には胸のところから踵《かかと》のところへ届くほどのサラサラした長い布で巻かれた。なんだか、艶めかしいいい香が鼻をうった。そうだ、昨夜もこのような匂いがしたっけ。
「両手をあげてよ、――」
「呀《あ》ッ……」
胸のまわりに、何かグルグルと捲きつけた。
次に、彼女が背後にまわる気配がして、こんどは肩の上からゾロリとした着物のようなものを着せた。(和服らしい?)
すると、こんどは腰骨のあたりを、細い紐でギュウギュウと巻いた。それがすむと、なんだか胸のところへたくしこみ、シュウシュウと音のする幅のある帯らしいものを乳の下に巻きつけた。――僕はドキンとした。頬が火のように火照《ほて》ってきた。
(これは女装じゃないか?)
それから気をつけていると、後のところはいちいち思い当った。さっき着たのは長襦袢らしく、その上にまた重い袖のある着物が着せられ、やがて腕をあげてその袖がグルグルと巻きつけられ、こんどは胴中に幅の広い丸帯が締められ、そして最後に、羽織が着せられたことまで分った。庵主はそ
前へ
次へ
全46ページ中36ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング