つ》へ、――。
(そうだ。杉箸の棒は折れたけれど、折れる前に、扉の腕金をすっかり起していたのだ! 万歳)
 僕は咄嗟の間に真相を悟った。
 僕は喜びのあまり、すぐに扉の外へとびだした。そして気がついて背後をふりかえると、さっきから僕のすることを興味ぶかげに寄ってみていた同室の二人が、これも続いて室内から飛び出してこようとするところだった。
「うぬッ――」
 僕はふりかえりざま、二人を室内に押し戻すと、鉄扉をピシャンと閉めてしまった。いま一緒に出られては、すぐ監守に見つかってしまう。それでは二ヶ月の苦心も水の泡だった。――押し戻された二人は、争って覗き穴のところから顔をつきだし、まるで獣のように咆《ほ》えたてた。
 僕は鉄扉の外から、腕金を横に仆して、もう誰も出られないようにした。そして暗い廊下の壁に身体をピタリとつけ、蜘蛛のように匍いながら出口の方へ進んだ。
 出口には、とても頑丈な鉄格子があって、その真中が、鉄格子の扉になっていた。そしてその外に、監守の詰所があった。そこには灯があかあかと点っていた。
 出口の鉄格子はピシャンと閉っていた。しかしその格子には、大きな錠前がついていなが
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