まさ》に、例の楊博士《ヤンはかせ》の皺枯《しわが》れ声《ごえ》に相違なかったのである。
「はッはッはッ。今ぞ知ったか。消身法《しょうしんほう》の偉力《いりょく》を」
「なにッ」
「汝《なんじ》の手に触《ふ》れる板硝子と、往来から見える板硝子との間には、五十センチの間隙《かんげき》がある。その間隙に、儂《わし》の発明になる電気|廻折鏡《かいせつきょう》をつかった消身装置が廻っているのだ。汝《なんじ》の方から見れば外が見えるが、外から見ると何も見えないのだ。どうだ分ったか」
 ウルランド氏は蒼白《そうはく》になって戦慄《せんりつ》した。
「おいひどいことをするな。早くここから出してくれ。貴様の云うことは何でも聞くからここからすぐ出してくれ」
 楊博士は薄笑いをして、
「まあ当分そこに逗留《とうりゅう》するがいい。だが町もいい加減《かげん》見飽《みあ》きたろうから、消してやろう」
 そういった声の下に、今まで見えていた往来《おうらい》が、まるで日暮れのように暗くなり、やがて真暗《まっくら》なあやめも分らぬ闇と変りはてた。その代り電灯が一つポツンとついた。
 それと入れ代って、繁華《はんか》な
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