始まった。樽のうしろや、器械台の下などを入念に調べたが別に怪しい密航者の影も見あたらなかった。
「さあ、密航者はいませんよ。もう大丈夫です」
進少年は、そう叫んだ。
「では出発だ。扉《ドア》を締めて……」
重い二重扉《にじゅうドア》がピタリと閉《と》じられ、四人の乗組員は、それぞれ部署についた。蜂谷学士は、ロケットの一番頭にちかい司令席につき六つの映写幕を持ったテレビジョン機の中を覗《のぞ》きこんだ。そこにはこの宇宙艇の前方と後方と、それから両脇と上下との六つの方角が同時に見透《みとお》しのできる仕掛けによって、居ながらにして、宇宙艇のまわりの有様がハッキリと分った。
そのすこし後には、進少年がラジオの送受機《そうじゅき》を守って、皮紐《かわひも》のついた座席に身体を結びつけた。その横にはミドリ嬢が同じように頑丈《がんじょう》な椅子に身体を結びつけていたが、これは沢山の計器《メーター》と計算機とをもって、宇宙艇の進行に必要な気象を観測したり、また進路をどこにとるのがいいかなどということについて計算をするためだった。
一ばん後方には、飛び入りの猿田飛行士が複雑な配電盤を守っていた
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