うネ。貴方が操縦して下さらないと、あたしたちは十年目に一度くる絶好のチャンスを逃がしてしまうんですもの。ぜひ行って下さいナ。……貴方は前からこの宇宙艇を操縦したいといってらしたわネ」
「ええ、お嬢さん。僕は決心しましたよ。僕がこの艇を操縦してあげましょう」
「まあ待ちたまえ」
 と蜂谷学士が云いかけるのを、ミドリは
「……まア蜂谷さん。まさか貴方はこれから十年して、あたしがお婆さんになるのを待って、月の世界にゆけとおっしゃるのではないでしょうネ」
「……」
 蜂谷学士は、なぜか猿田飛行士が探険に加わることを好まぬ様子だったが、ミドリは滅多《めった》に来ないチャンスを惜しむあまり、とうとう羽沢飛行士の代りに猿田飛行士を頼むことにきめてしまった。
 艇の出発はいよいよ間近《まぢ》かになった。のこっているのは、飲料水の入った樽《たる》がもうあと十個ばかりだった。一同は力をあわせて、この最後の荷物を搬《はこ》びこんだ。
「さあこれで万端《ばんたん》ととのった。……進君、もう一度宇宙艇のなかを探してくれたまえ。万一密航者などがコッソリ隠れていると困るからネ……」
 厳重《げんじゅう》な艇内捜索が
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