いた。なぜこんなところに新宇宙号がプカプカ浮んでいるのだろう。辿《たど》りついてよく見れば、噴射瓦斯《ふんしゃガス》へ通ずる電線の入ったパイプが何物かに当ったと見え断線《だんせん》していた。これでは瓦斯が止ってしまうのも無理はない。それにしても、空中でよほど硬い大きな物体に衝突しなければならない筈……。
 進少年はハタと膝をうった。
「こう考えればいいのだ。――最初犬吠が乗り逃げした宇宙艇は、誤《あやま》ってこの無引力空間に陥《おちい》って、ここを漂《ただよ》っていたのだ。そこへまた今度、猿田の操縦した新宇宙艇が通りかかって、図《はか》らずもドーンと衝突した。そのときパイプが裂《さ》けて、動かなくなり、そのままこの無引力空間に漂い始めたんだ。一方、旧型《きゅうがた》の宇宙艇はこの衝突で跳ねとばされて、その勢いで月世界へ墜落《ついらく》していったものだろう」
「実にうまく出来ている。悪人の末路《まつろ》は皆こんなものだ」
 と佐々《さっさ》も合槌《あいづち》をうった。
 そこで二人は艇内をこじあけて工具をとり出し、パイプと電線とを外から修理して接ぎあわせ、そして新宇宙艇を再び操縦して地球
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