へ急いだが、快速のため、蜂谷艇長の一行よりも早く帰りついたのだった。
 猿田は艇内でピストル自殺をしていた。器械が動かなくなったので、観念したのだろうと思う。
 全国の新聞やラジオは、進少年や密航記者|佐々砲弾《さっさほうだん》の愕くべき奇蹟を大々的《だいだいてき》に報道した。すると祝電と見舞の電報とが、山のように二人の机上《きじょう》に集った。それは日本ばかりではなく、遠くベルリンやローマから、またロンドンやニューヨークからのものがあった。その大きな同情は、いま月世界に病《や》む進君の父六角博士をぜひ救い出さねばならぬという声にかわっていった。この分では老博士救助の新ロケットが飛びだす日もそう遠くはあるまい。



底本:「海野十三全集 第8巻 火星兵団」三一書房
   1989(平成元)年12月31日第1版第1刷発行
初出:不詳
入力:tatsuki
校正:土屋隆
2005年11月23日作成
青空文庫作成ファイル:
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