は、日を改《あらた》めて迎えに来ようということになった。
修理された古い宇宙艇が、すこしばかりの金塊《きんかい》を土産に、「危難《きなん》の海」近くコンドルセを出発したのは、月世界に到着してから十日後のことだった。
「さあいよいよ地球へ帰れるぞ」天津飛行士はエビス顔の喜び様《よう》だった。
「さあ、月世界よ、さよなら」
「さよなら、また訪問しますわ」
やはり艇長の役を引うけた蜂谷学士はミドリ嬢と窓に顔をならべて、荒涼《こうりょう》たる山岳地帯のうちつづく月世界に暇乞《いとまごい》をした。
「おじさん、今度は大威張《おおいば》りで帰れるネ」
「そうでもないよ、進君」
佐々と進少年はすっかり仲よしになってニコニコ笑っていた。
「出航!」
命令|一下《いっか》、艇は静かに離陸していった。
「お父さま。いいお医者さまを連れて、お迎えに来るまでぜひ生きていて下さーい」
進少年は窓から、動く大地に祈った。
ロケット船宇宙艇のスピードは、だんだんと早くなった。艇内のエンジンは気持よく動き、各員はその持ち場を守ってよく働いた。佐々《さっさ》記者は、今度は食料品係を仰《おお》せつかってまめま
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