蜂谷たちに知らせると、急いで階段をのぼった。上《あが》ってみると、なるほど砂中《さちゅう》からニュウと出ている銀色の板――。
「おお、これは宇宙艇じゃないか」
それでは、猿田の操縦していった新宇宙艇が、墜落《ついらく》してきたのであろうか。一行は非常な興味をもって、これを砂中《さちゅう》から掘りだしてみた。
「ウンこれは違う。新宇宙艇ではない」
と蜂谷学士は首を左右にふった。
「オヤオヤ」突然|横合《よこあい》から叫んだのは天津飛行士だった。「これは愕《おどろ》いた。奇蹟中の奇蹟! 六角隊長と私とをこの土地に残して、空に飛びだした第一の宇宙艇だ」
恐ろしき違算《いさん》
「あらマア、不思議なことネ」
「全く貴女がたの場合と同じような事件だったので。そのときも一行中に犬吠《いぬぼえ》という慾の深い男がいて、月の世界の黄金塊《おうごんかい》をギッシリ積むと、隊長と私とを残して置いて、単身《たんしん》飛びだしたんです。私は犬吠が地球にかえったとばかり思っていたのに、これは実に不思議だ。どれ内部を調べてみれば何か分るだろう」
蜂谷にミドリ、それに進も手をかして扉《ドア》をこ
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