段を下に下りてみようと思うのです。何だかあの下には、生物が住んでいるような気がしてならないのです。さあ皆さん、元気を出して下さい」
艇長の言葉はよく分った。死ぬ覚悟《かくご》さえつけば、何の恐るるところもない。そこで三人は負傷している佐々記者を担《かつ》いで、黄金の階段の方へ引返していったのだった。
するとどうしたことだろう。さっきは誰もいなかったと思うのに、黄金階段の上には紛《まぎ》れもなく人間の形をした者が一人立っていて、しきりにこちらを見ていたが、やがて明瞭《めいりょう》な日本語で、
「おお、そこにいるのは、妹のミドリではないか」
愕《おどろ》いたのはミドリだった。
「……ああら、兄《にい》さま。まア……」
と叫ぶなり、彼女は死んだものとばかり思っていた兄の天津《あまつ》飛行士の胸にワッとばかり縋《すが》りついた。
その場の事情を悟《さと》るなり、進少年はにわかに興奮して、
「おじさん。僕の父はどこに居ます。早く教えて下さい」
「おお、あなたのお父さんとは……」
「それ六角博士《ろっかくはかせ》ですよ。僕は六角進《ろっかくすすむ》なんです!」
「ナニ六角進君。ああそうで
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