先に地上に下ろすと、私の隙《すき》をうかがってドンとピストルで撃ったのです。今だから云いますが、あの人は恐《おそ》ろしい殺人犯ですよ。私が砧村《きぬたむら》にある艇内に忍びこむ前のことでしたが、小屋の前に立っていた人(羽沢飛行士のこと)をピストルで撃ち、待たせてあった自動車にのって逃げるのをハッキリ見て知っているのです。全く恐ろしい人です」
「ああ、それで分ったわ。猿田は月世界《つきのせかい》の黄金《おうごん》目あてに是非この探険隊に加わりたくて、羽沢さんを殺したんですわ。そして何喰わぬ顔をして、参加を申し出たのよ。それとも知らず、あたしが参加を許したりして……ああどうしましょう。もう地球へは戻れなくなったわ。ああ……」
 四人は顔を見合わせて、深い絶望に陥《おちい》った。


   黄金《おうごん》階段を下る


 さすがに艇長だけあって、蜂谷学士は決心を定《き》めて顔をあげた。
「さあ、地球へ帰れないなんて、始めから決心していたことで、今更《いまさら》歎《なげ》いても仕方がないことですよ。それよりも、こうなったら探険隊の仕事をすこしでもして置きたいと思いますが、どうです。私は例の階
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