の塊を艇の中に置いて、また引返して来て拾うつもりなんですよ。……いやそう慾ばっても、そんなに積ませやしませんよ。だがあの男は抜目《ぬけめ》なしですネ。はッはッはッ」
 一行は先を急いだ。あと十分ばかりして、彼等ははるばるこの月世界まで尋ねて来た最大の目的物を探しあてることができた。
「あッ、これが白い点に見えたところだ。ごらんなさい。附近の砂地とは違って、大穴が明《あ》いている。ホラ見えるでしょう。幅の広い階段が、ずッと地下まで続いている」
「あら、随分《ずいぶん》たいへんだわ。……ねえ、蜂谷さん。あの階段は黄金でできているのですわ。猿田さんが持っていったのは、その階段の破片《はへん》なんですわ。ホラそこのところに、破片《はへん》が散らばっていますわ。ぶっかいたんだわ、まあひどい方……」
 進少年は、かねて月の世界には黄金が捨てるほどあると聞いたが、こんな風に地球の石塊《せきかい》と同じように、そこら中《じゅう》に無造作《むぞうさ》に抛《ほう》りだしてあるのを見ては、夢に夢みるような心地がした。
「私の喜びは、月世界《つきのせかい》の黄金よりも、このような階段を作る力のある生物が棲《す
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