かしら」
進少年の発した愕《おどろ》きの言葉に、一行ははっとして、荒涼《こうりょう》たる砂漠の上に足を停《とど》めた。
絶望
「――ああ、何のことだ、あれは月の世界の生物でなくて、地球の生物で、あれは飛行士の猿田君なんですよ」
と、艇長は双眼鏡を眼から外《はず》していった。
「まあ猿田さんが……。どうしたんでしょう」
なおも進んでゆくと、果《はた》して前方から、猿田飛行士が大ニコニコ顔で近づいてきた。
「オイどうした。なにか階段のある穴のところまで行ったかネ」
「ああ行って来ましたよ。素晴らしいところです。私は道傍《みちばた》で、こんな黄金《おうごん》の塊《かたまり》を拾《ひろ》った。まだ沢山落ちているが、とても拾いつくせやしません。早く行ってごらんなさい」
そういいすてると、彼は歩調《ほちょう》もゆるめず、大きなマスクの頭をふりたてて、ドンドン元《もと》来《き》た道に引返《ひきかえ》していった。
「あの男《ひと》、あんなに急いで帰って、どうするつもりなんでしょう。変ですわネ」
と、ミドリは不安そうに、遠去《とおざ》かりゆく猿田の後姿をふりかえった。
「あの黄金
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