なった丸い出入口は、久方《ひさかた》ぶりで内側へ開かれた。一行四名はマスクをして艇長を先頭に外へ出ていった。
丁度その上陸地点は、太陽の光を斜めに受けて、かなり気温は高い方だったのは意外だった。
砂地に下りたって歩きだすと、身体に羽根が生えたようにフワフワと浮いた。それは地球とちがい、月の世界では引力がたいへん小さいせいだった。
一行は、「危難の海」といわれる平原に見えた白い斑点をさして歩きだした。月には一滴《いってき》の水もない。だから地球から見ると海のように見えるところも、来てみれば何のことか、それは平原に過《す》ぎないのであった。さて一行のうち、猿田飛行士一人は、他の三人をズンズン抜いて、猛烈なスピードで前進していった。ミドリはさすがに女だけあって、とても猿田の半分のスピードも出ず、従《したが》って三人は一緒に遅れて、猿田との距離はみるみる非常に大きくなっていった。
三人は慣れないマスクと、歩きにくい砂地とに悩みながら、三十分ほども歩いたが、そのとき、前方からキラキラと煌《かがや》くものがこっちへ近づいて来るのを発見した。
「あッ、誰かこっちへ来る。月の世界の生物じゃない
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