きていて、その階段を築いたのではないでしょうか」
「さあ……」艇長は、十年|前《ぜん》に探険に出かけた博士たちが今まで月世界に生きているものですかと云おうとして、やっと思いとどまった。「それならいいのですがねえ」
「あたしも御一緒に参りますわ。ああ嬉しい」
そのとき進少年が、艇の底にある倉庫から上ってきた。
「艇長さん、食料品がすこし心細くなったよ。直ぐ引返すとしても、帰りの路は半分ぐらいに減食《げんしょく》しないじゃ駄目だ。ことに水が足りやしない。なにしろ一つの水槽《すいそう》の中に、記者の佐々おじさんが隠れていたんだものねえ。あはははッ」
それを聞くと、猿田飛行士は、ギョロリと眼玉を動かした。
艇はその間にだんだん下降して、とうとう真白な砂地《すなじ》にザザーと砂煙りをあげながら着陸した。
ここに哀《あわ》れを止《とど》めたのは、密航者の佐々砲弾《さっさほうだん》だった。折角《せっかく》ここまでついて来たものの、艇長は彼が上陸することを許さなかった。砲弾という勇しい名をもった彼も、今更《いまさら》どうする力もなく、黙ってその命令を聞くより仕方がなかった。
新宇宙艇の二重に
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