しているようであるが、その写真で明瞭であるとおり、何某から五六メートルも離れた位置より、彼等の内の何人たりとも何某の首を切断することは不可能事である。況《いわ》んや、彼等の手に、一本の剣も握られていないことは、この写真の上に、明瞭に証明されている。理由なき抗議は、迷惑千万である”
 とて、真向《まっこう》から否定して来たのであった。
 なるほど、そういえば、相手方のいうことも、一理があった。
 だが、一旦抗議を発した以上、このまま引込んでしまうことは許されない。そこでまた、相手方の攻撃点に対して、猛烈な反駁《はんばく》を試《こころ》みた。
 そのような押し問答が二三回続いたあとで、ついに双方《そうほう》の間に、一つの解決案がまとまった。それはどんな案かというのに、
“では、鬼仏洞内の現場に於《おい》て、双方立合いで、検証《けんしょう》をしようじゃないか”
 ということになって、遂《つい》に決められたその日、双方の委員が、鬼仏洞内で顔を合わすこととなった。
 新政府側からは、八名の委員が出向くことになったが、うち三名は、特務機関員であって、風間三千子も、その一人であった。
 その朝、新政
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