に出かけると云った。ばあさんには、なんだか、軍艦のついた帛紗《ふくさ》をよこし、皆で喰えと云って、錨《いかり》せんべいの、でかい缶を送って来たので驚いたよ。いずれ後で出してくるだろう」
「そりゃいよいよ感心ですね」
「うちのばあさんは、これは清二にしちゃ変だと云って泪《なみだ》ぐむし、みどりはみどりで、どうも気味がわるくて喰べられないというしサ、わしゃ、呶鳴《どな》りつけてやった。折角《せっかく》買ってよこしたのに喜んでもやらねえと云ってナ」
「なるほど、多少変ですかね」
「尤《もっと》も、紅子と素六とは、清《せい》兄さんも話せるようになった、だがこれは日頃の罪滅《つみほろ》ぼしの心算《つもり》なんだろう、なんて減《へ》らず口《ぐち》を叩きながら、盛んにポリポリやってたようだ」
「清二は乱暴なところがあるが、根はやさしい男ですよ」
「そうかな、お前もそう思うかい。だが潜水艦乗りを志願するようなところは、無茶じゃないかい。後で聞くと、飛行機乗りと潜水艦乗りとは、お嫁の来手《きて》がない両大関《りょうおおぜき》で、このごろは飛行機乗りは安全だという評判で大分いいそうだが、潜水艦のほうは、ま
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