う。そこで爆弾をボンボンおっことすから、大変なことに、なっちゃう。だから空襲のときには、電灯をすっかり消して、山だか海だか、判らないようにして置くことが大切でしょう」
「そんなことァ知ってるよ」長造は、顔を膨《ふく》らましてみせた。
「皆で、電灯のスイッチをパチンとひねれば、いいじゃないか」
「だけど、スイッチを誰がひねるか判っていないのですよ。電柱についている電灯だとか、お蕎麦《そば》やさんの看板灯《かんばんび》なんかは、よく忘れるんですよ。ですから、警戒管制になると空から見える灯火《ともしび》は、いつでも命令あり次第に、手早く消せるように用意をして置くんです。あっても、なくてもいいような電灯は、前から消して置く。これが警戒管制です。僕、受持は、水の公園と、あの並び一町ほどの民家《みんか》なんです」
「民家!」長造はニヤニヤ笑い出した。「生意気な言葉を知ってるネ。じゃ、行っといで。遊びじゃないんだから、乱暴したり、無理をしちゃ、駄目だよ」
「うん、大丈夫!」
 少年は、ニッと笑うと、そのまま脱兎《だっと》の如く駈け出して行った。
 長造が店頭《てんとう》を入ると、そこにはお妻《つま》
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