はお誕生祝はしないじゃないか、だから、五十から引く一で、四十九回さ」
「なるほど、そう云えば……」
「そう云わなくても四十九回、始終《しじゅう》苦界《くがい》さ。そこでこの機会に於て、遺言《ゆいごん》代りに、子沢山の子供の上を案じてやってるんだあナ」
「まあ、およしなさいよ、遺言なんて、縁起《えんぎ》でもない、鶴亀鶴亀《つるかめつるかめ》」
「お前は実によく産んだね、オイばあさん。ちょいと六人だ。六人と云やあ半打《はんダース》だ。これがモルモットだって六匹函の中へ入れてみろ、騒ぎだぜ」
「やあ、お父さん、お帰りなさい」長男の黄一郎《きいちろう》が入ってきた。
「モルモットをどうするとかてえのは、一体なんです」
長造とお妻とが顔を見合わせて、ぷッと吹きだした。
「お父さんは、お前たちのことをモルモットだって云ってなさるよ。よくお前は六匹も生んだねえ、なんて」お妻はおどけて嗾《け》しかけるように云った。
「私達がモルモットなら、お父さんは親モルモットになりますね、ミツ坊は孫モルモットで……」
「そうそう、ミツ坊に、この靴下を持ってってやらなきゃあ。おじいさんは、靴下を早く持って行けと云っ
前へ
次へ
全224ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング