が、勤務時間中でも、その辺をウロウロして、自分の顔をジロリと覗きにくることを思い出して云った。
「向うは何しろ軍需品工場ということだからこっちから無理に頼むことは出来ないのですテ」
「じゃ、あたしが、監視哨になりましょうか」
「ええッ、貴女が……」町長が驚いて云った。「貴女がなって下されば、勤《つと》まると思いますが、実は兄さんにもお願いしてあったのですが、むしろ貴女には、救護所の方でお手助けが願いたいのです。この方には、貴女のような気丈夫《きじょうぶ》な方が、是非必要です。監視哨は、高い櫓《やぐら》の上に、昼といわず夜といわず上って、眼と耳とを、十二分に働かしていなければならぬのです。誰かいい人を思付《おもいつ》かれたら、どうか教えて下さい。では、兄さんにはよろしく」
 そういって町長は、帰って行った。
(誰か、目と耳との鋭い人は居ないものかしら?)
 真弓は、そのまま奥の間にも引込まず、店先で、ぼんやり考えていた。
 すると、遠くで、自動車の警笛が聞えた。聞くともなしに聞いていると、どうやら、こっちへ近づいて来るらしい。この辺では、あまり見懸けない自動車らしい音色《ねいろ》だった。
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