の夜襲、北海道、青森県の占拠《せんきょ》まで、可也《かなり》の犠牲をかけて、日本艦隊の釣出しを試みたのであったが、わが聯合艦隊司令長官|大鳴門正彦《おおなるとまさひこ》大将は無念の唇を噛み、悪口《あっこう》を耳より聞き流し、唯《ただ》、決戦の最も有利な機会の来るのを待った。
そして、いよいよ其の日は近づいたのだ。布哇《ハワイ》のパール軍港に集結していた敵艦隊の主力は、とうとう日本艦隊を待っている辛抱ができなくなり、ついウカウカと、有力な根拠地|布哇《ハワイ》を離れる気になった。斯《こ》うして太平洋上の二大艦隊は、相手を求めて刻一刻と、相互の距離を縮《ちぢ》めて行った。
「いよいよ、永年憧れていた恋人が、やって来たぞ」そういったのは、旗艦《きかん》陸奥《むつ》の士官室《ガン・ルーム》に、其の人ありと聞えた剽軽《ひょうきん》な千手《せんじゅ》大尉であった。
「ほほう、どの位、近づいたのか」バットの煙を輪に吹きながら、戦略家の藤戸大尉が訊《たず》ねた。
「主力の位置は、本日の唯今、北緯四十二度、東経百六十五度。北海道の真東《まひがし》、千八百キロというところだ」
「すると、敵艦隊は、今日に
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