いか」
「うしろからいって、二人で彼奴《あいつ》の足を一本ずつ引きたおそう!」
 敵国のために、人心を乱そうとしたスパイは、二少年によってあばかれ、防護団員に縛りあげられてしまった。団員は大喜びだった。その上、敵の空襲部隊が全滅したというラジオ・ニュースを旗男から聞いたので、防護団員は、その場に躍りあがって喜んだ。そして一斉に万歳を唱えた。
 ああ遂に、帝都は救われた。大日本帝国の危機は遂に救われたのだ。
     *
 それから三日して、旗男のところには二つの大きな快報が舞いこんで、彼を有頂天《うちょうてん》にさせた。
 一つは、直江津の姉露子と可愛い正坊が、無事にたすかって、今は小学校の避難所に収容されているという手紙が届いたことだった。
「姉さんと正坊、万歳!」
 それからもう一つの快報は、わが精鋭なる爆撃隊が、突如S国に侵入し、やがて、第二の日本大空襲を準備しつつあった敵の空軍根拠地を散々にやっつけてしまったことだった。S国は、この勇猛なる爆撃のため、再び日本空襲をする力を全く失ってしまった。またS国の参謀本部の中にも、日本人の防空訓練の行きとどいていることをあげて、たとい何百
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